これからの人生の目的をどう定めるか

リハビリを提供する方は色々な境遇の方がいます。回復期リハビリ病院に入院している時には、自宅に帰って一人でもしくは家族と生活できるような体の状態を目標にリハビリを行なっています。自宅に戻れば、その方の生活が継続できるようにご自身やリハビリが介入していきます。その中でも職場への復帰を次の目標にするかたもいます。

 

私が担当した方の中にも見事に職場復帰された方がいました。日常生活動作能力は概ね自立しておりましたが、記憶や遂行機能など高次脳機能障害もありました。もとの仕事とまではいきませんでしたが、同じ会社にもどることができました。会社の助けもありながら少しづつ仕事になれていきました。生活も安定た生活がつづいていると言えるでしょう。

 

そこで私が考えたことは、このままリハビリ は必要なのかということです。日常生活は自立して、職場復帰を果たして、生活は安定している状態です。本人に伺えば気になることは麻痺している手足の機能回復の要望が聞かれます。しかし、それはいわゆるdemandでありneedsではないのではないか。

 

ある種身体機能の終わりなき回復への希望、すなわちリハビリが目的となっているのではないか。現在では医療報酬、介護報酬の観点からして効果のでないダラダラと続くリハビリは行うべきではないという考え方です。しかし、一方では昨日まで動いていた手足が一日で全く別人のものになってしまった状態を数ヶ月、一年で受け入れることができるのでしょうか。大学受験はまた来年あります。生活ができなくなるわけでもありません。家族との離別があるわけではありません。

 

現在の日本はあまりに環境的制限が多すぎます。階段や段差、エレベーターなどの物理的環境、障害者を雇ってくれる会社の少なさなど社会的環境の制限がそれです。これらの多くが解消されたときに、リハビリ自体が目標となることがへるのでしょう。生活にゆとりある経済状況と、自由な外出と生活。まさに生活の復活となるのでしょう。

 

私たちリハビリに関わる職種は、現在これらの環境に対してどのような介入ができるのか。自宅の中や自宅周辺の環境を変えることはできるのかもしれません。しかし、住み慣れた地域や外出先すべての環境を変えることは並大抵のことではありません。会社の仕事全てを障害を持つかたに適応することはできません。

 

私たちは患者さん一人一人に介入しています。しかし、一人の方の新しい人生の手助けをするためには、会社や役所といった環境に対しても介入する必要があるでしょう。